真空管USBメモリを3Dプリンタで作った

はじめに

SFの中にスチームパンクというジャンルがあります。
(参考:スチームパンク - Wikipedia)

蒸気機関が小型化・発展して19世紀の空気そのままに文明が発展した現代/未来を描くジャンルです。
最近読んだ中では「ペルディード・ストリート・ステーション」(チャイナミエヴィル, ハヤカワ文庫)などがスチームパンクに含まれます。
(参考:ペルディード・ストリート・ステーション (上) (文庫) 感想 チャイナ ミエヴィル - 読書メーター)

真空管スチームパンクに入るかどうかはかなり怪しい気がしますが(電気使ってるし…)一応スチームパンク風のUSBメモリを作ってみました。

f:id:domitry_h:20140224165217j:plain

動作中は橙色に光ります。
ヒーターを点けるのはUSB給電では難しく、コンデンサを使った残光回路もあまりうまくいかなかったので一番単純に、書き込みや読み込みのタイミングでLEDが点灯するようにしました。
またここで紹介されているように一度真空管を切断してヒーターのあった部分にLEDを付けるのも楽しいと思います。
(参考:真空管風 デジタルオーディオアンプ製作への道のり1)

材料・工具紹介

  • 真空管(東芝製2GK5)
  • iBUFFALO microSDカードリーダー
  • メーカー不明microSDカード(4GB)
  • 真鍮製ニップル
  • 真鍮製六角キャップ
  • 高輝度橙色LED
  • お土産ものレーザークリスタルが入っていた箱
  • 綿(通常の綿とキルト綿)
  • やすり数種類
  • ピンバイス(径が1.5mmのもの)
  • 金鋸
  • ニッパー
  • ペンチ
  • 精密ピンセット
  • セメダイン
  • 3Dプリンタ(Bits From Bytes 3D Touch)

3Dプリンタは大学で使わせていただいています。ホースニップルと六角キャップはホームセンターで、綿は手芸店、それ以外は大体日本橋で揃えました。

作業工程

図面を書く

イメージ図を書きます。

f:id:domitry_h:20140224175401j:plain

ニップルを加工する

寸法が決まれば早速加工を始めます。
まずはニップルのホースをつなげる部分が邪魔なので金ノコで切り落とします。

f:id:domitry_h:20140219212115j:plain

ホースをつなげる部分を切りおとした後、できた穴の径が小さすぎるのでやすりで広げます。
最終的にもう片方の端の穴と同じ径(PT1/2)まで拡張しました。
徹夜明けにこの作業をすると指の筋肉がつるので要注意。

中間ユニットを出力する

図面にもとづいてCADで設計をします。何でもよいと思いますが私はAutodeskのInventorを使用しました。
設計が終わったら3Dプリンタで出力します。

f:id:domitry_h:20140123210014j:plain

出力中の3Dプリンタ
夜に一人でプリンタの前に粘っているとだんだんとモーターの駆動音に愛を感じるようになります。

f:id:domitry_h:20140222002741j:plain

出力できました。

microSDカードリーダーの加工

microSDカードリーダーの外装をはがします。
クリップ状になっている部分が邪魔なので外側に曲げます。

f:id:domitry_h:20140222013127j:plain

部品1の加工

真空管の足とLEDを通す穴が開いた部品です。
3Dプリンタの精度の問題で穴が小さく出力されてしまったため、ピンバイスで穴を広げます。
LEDの穴は多少大きいので丸やすりで広げます。

終わったらArduinoから電源を引っ張ってきてブレッドボード上でテストします。
橙色のLEDがいい感じの雰囲気を醸し出しています。

f:id:domitry_h:20140221233815j:plain

部品2・3の加工

microSDカードリーダーを挟み込んで固定するための部品です。
こちらも出力時の精度が悪く、全体が歪んでしまっているのでやすりで頑張って加工します。
カードリーダーをちゃんと固定できるように穴やくぼみを調整します。

f:id:domitry_h:20140224173916j:plain

できました。(後から撮りなおした画像のためLEDがついていますが、本当は現時点ではんだ付けは終わっていません)

高さ調整

このあたりでmonotaroから六角キャップが届きました。
確認してみるとキャップをしめるには高すぎることが判明したので、中間ユニットの高さがもうちょっと低くなるように各部品を加工します。
部品1は足が出ないように、2はカードリーダーが部品1と接触しないギリギリまでただただ削るだけです。

メモリ下部の仕上げ

高さ調節が終わったら再度ニップルを加工します。
今度はPT1/2、オスのねじになっている方を中間ユニットの高さに合わせて切断します。
ねじのみぞに鋸の刃が挟まって曲がって切ってしまいそうになりますが、頑張って直線に切断します。


ニップルを加工し終えたら中間ユニットとカードリーダーをテープで仮止めし、ニップルの穴に入れて一度組み上げてみます。

f:id:domitry_h:20140222041415j:plain

いい感じです。

LEDをはんだづけする

microSDカードにもともとついていたLEDは青色でした。雰囲気にそぐわなさそうなので橙色のLEDに交換します。
LEDは梅田のラジオショックで5本で100円でした。

まずは電流と電圧が必要か確認するため、もともとついていたチップLEDの電流を拝借してみます。

f:id:domitry_h:20140222013415j:plain

ちゃんと光りました。

それでははんだごてを当ててチップLEDをはがし、橙色のLEDをはんだ付けします。
私の中学校の技術の授業以来のはんだ付けスキルでは難しい加工でした。
はんだ付けの失敗でいくつもカードリーダーを吹き飛ばしました…
ヨドバシカメラのポイント2500円分という多大なる犠牲ののち完成しました。

f:id:domitry_h:20140223012541j:plain

ちゃんと橙色に光ってます。

箱を作る

これで本体はほぼ完成なので次に入れ物を作ります。
木箱などを購入して色々検討しましたが、イギリス土産のレーザークリスタルが入っていた箱に高級感が漂っていたので使います。

真空管のガラスが割れないように底に敷いてある布に切込みを入れ、中に綿を入れます。
また、キルト綿を箱の大きさに切り、真空管の上にかぶせるようにします。

f:id:domitry_h:20140224172428j:plain

できました。

組み上げ・完成

まず真空管と部品1を接着剤で接着します。
次に部品1と2, 3をそれぞれ接着し、しばらく放置します。

乾燥したら中間ユニットをニップルの穴の中に挿入し、完成です。

f:id:domitry_h:20140222085710j:plain

お疲れ様でした。

まとめ

完成品に使った部品の総額は大体2000円くらいですが、試作なども含めるとそれ以上になります。
コストパフォーマンスはよいですが、加工はかなり大変なので私のようなはんだ付け・加工のド素人が作るのはあまりお勧めしません。
しかし私の場合はとても喜んでいただいたので、贈り物として手作りするのがいいかもしれません。